だけど違う場所で、私の居ない場所でなら。
 ふたりきりならシドニーはいつもの親愛の抱擁ではなく。
 私には決して見せない、甘く優しい表情で。
 愛しいモニカを離さないと強く抱き締めていたのだ。



 初めて会った16の頃から憧れて、信頼していた先輩。
 本当の姉妹のように、どんなことも分けあってきた従姉。

 ふたりを会わせたのはいつだった?
 確か2年前、王都が猛暑に襲われた夏。


「この暑さ、有り得ないよ、もう耐えられない!
 クレイトンには、山と湖が有るんだろ?
 避暑に行かせてくれないかな?」

「シドニーのおウチ、海辺に別荘持ってなかった?
 あちらには行かないの?
 勿論来て貰うのは全然構わないけど、本当に自然以外何にも無いところよ?」

「海なんか照り返しがキツくて、ここより暑いし、潮風はベタつくし。
 海より山の方が涼しいからさ。
 迷惑じゃなければ、ジェンの思い出話とか?
 案内しながら教えてよ」