激しい頭痛と倦怠感に包まれながら目を覚ました。

 ゆっくり起き上がったとき、ずき、と心臓に痛みが走る。

「……っ」

 咄嗟に押さえながら思わず顔を歪めた。

 はさみが刺さったままなんじゃないか、と一瞬思ったけれど、見やっても当然そこには何もない。

 ベッドから下り、ふと鏡が目に入った。

 小さく震える手で頬に触れる。

「…………」

 自分でも分かるくらいに顔色が悪く、唇も真っ白だった。

 これでは生きているのか死んでいるのかも分からない。
 どんどん辛くなっていく。



『幸せ者だな』

 向坂くんの冷ややかな声が耳の奥でこだまする。

 そのたび、心にひびが入った。

(でも、諦めない)

 諦めたくない。
 時間がないのだから、やれるだけのことをやるしかない。

 結末は変えられる。
 決めるのは自分自身だ。



 亀のような速度で何とか支度を整え、重たい身体を引きずるみたいにして家を出た。

 一人では味気なくなった学校までの道も、今日は一段と色褪せて見える。

 校門を潜り、昇降口へ入った。

 教室に着いたらまず蒼くんに“昨日”のことを報告しよう……。

 そんなことを考えながら靴を履き替えようとすのこに上がったとき、不意に目眩がした。

(あ、れ……)

 目の前が霞み、ものの輪郭が二重に見える。

 水の中にいるみたいに周囲の音がくぐもって聞こえる。

 そのまま意識が遠のいていった。
 ふっ、と力が抜ける────。