逢いに行けない,過去で現在の実の両親。

最後にはいつも,17年前の丁度この日に見たあの人。

それが終わると,今の姉や両親,その場にいるはずもない親戚を誰でもいいと探しに行く。



「おはよう,お姉ちゃん」

「おはよう紅葉(もみじ)



もみじ……新しい,とは言えよく慣れた私の名前。

七夕の朝に私を迎えたのは,今年は1つ上の,唯一の姉(いろは)だった。

ぎゅっと抱きつくと,それがおかしな気まぐれでないと知っているお姉ちゃんは,困ったようにしながらも受け入れる。



「今年もなの? あんたのそれ,生まれたときからだって言うじゃない」

「うん,でも……家族って実感するの」



何が現実か分からなくなるから,そういう儀式なの。

せめて,転生した先があと100年向こうなら何も迷いはしなかったのに。



「今年も朝から短冊見てたの? どうせ書かないのに」



お姉ちゃんは,ただ折り紙を切っただけの短冊を見て首をかしげた。

だって,捨てるのも勿体ないじゃない。

私は頬をわざとらしく膨らませる。



「仕方ないでしょ。去年までは学校が,今年は本屋に行ったらくれたんだもん。それにいつも何にするかは決まってるんだよ」

「そうなの? なに」

「無事故息災」



即答すると,お姉ちゃんは呆れたように息を吐いた。