ほんとに,来てる……。
クッキーとコーヒーの手土産付きだった。
居座るつもりなど本当になかったのに,食えと言われればしかたがない。
「お姉ちゃんは? どうしたんですか?」
「テストやばかったから勉強」
「……教えて,あげないの?」
「俺は,妹を頼ま……大事だから仲良くなっとけって呼ばれただけだから」
なに? やっぱり,結婚するの???
「それでお客様,彼女の妹でしかないほぼ初対面の女の子を押し付けられたわけですが。何かご希望は?」
雑な空気が,私の心を緩めていった。
敬語からタメ語,思い出してのよく分からない口調。
ツンと澄ました鼻を,高峯さんはつついた。
「……トランプ?」
「りょーかいでーす」
私はぱたぱたと少し茶色くなったトランプを用意する。
一瞬で終わったババ抜きのあと,私はぱたりとカードを置いた。



