「お姉ちゃんの初カレかぁ。夢が一杯だね!!! もしかして初恋もじゃない??!!」
「あーはいはい。そうだよそうだよ。好きになれる人を待ってたからね私は。いい加減紅葉も私のことじゃなくて……誰かいないの?」
「……んー。私は,まだいいかな。夢見てるくらいで,想像してるだけでいいの。お姉ちゃんみたいに,同じく待ってるところなの……っ!」
ぴたりと一瞬翳った表情に,そのあと笑った私にも。
お姉ちゃんは心配そうな顔をした。
「紅葉……あんた私が知らないうちに騙されたとかからかわれたとかなら,言いなさいよ? 昔から円満にやって来た仲じゃない。妹の敵くらい屁じゃないの」
「もー。屁とか言わないでよ。そんなんじゃないって」
聞けなかった言葉,言えなかった言葉。
儚く消えた2つの大事な命。
好きだった,ひと。
あの恋を手放して,新しい恋をする事が私に出来るだろうか。
あとたった1年で,16歳の七夕がやって来る。
今までは眼中にすら入らなかった子供を,そう言う対象で見るようになるのだろうか。
やっぱり,まだ。
終わったのか終わってないのかも分からない,ただ残像かもしれない感情にすがってしまう。



