若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜

その後しばらく雑誌を見ていると、あっという間に名前が呼ばれドキドキしながら診察を受ける。

「あっ、心拍が分かりますよ。」
内診のエコーで女医からそう言われ、花はホッと一安心する。

「本当ですか?良かったぁ、安心しました。」

「でもまだ安定期までは安心できませんよ。」
と、女医に言われ身を引き締める。

心配な点は悪阻が酷くて、ご飯を食べても戻してしまう事、貧血気味なのて血圧が若干低めな事。

赤ちゃんは順調に育っているけど、自分の体調が思わしく無くて決して手放しで喜べる状態では無かった。

悪阻が酷過ぎると、妊娠中毒症の疑いもあるから、注意深く自分自身の体調に、今まで以上に目を向けるようにと釘を刺される。

その後、1時間ほど点滴をして、気持ち体調が落ち着いた花は、今なら何か吐かずに食べれそうだと思うほど元気になった。

柊生には点滴をして楽になった事だけメールして、女医さんからの一部始終を伝える。

これで少しは安心してくれるはず。
来た時よりも気持ちも上がって、康生に連絡をする。

帰りに軽く2人で近くの喫茶店に入って、昼食を取りながら妊娠した事を康生に伝える。

康生からはやっぱりな。
と言う言葉と、尚更実家に戻ってのんびりすれば良いと提案される。

花からしてみれば、母も女将業で忙しいし、実家に帰った方が、いろいろバタバタしてしまう気がする。

「そんな事気にしないでゴロゴロして過ごせば良いんだ。1人の方が気を使わなくて楽かもしれないけどさ。
俺達は花を1人にさせとく方が心配なんだ。」

康生はそう言う。

このまま実家に行くか?と誘われ少し心が揺れ動くけど、

「柊君にちゃんと話してからにするね。きっと1番心配してるから。」
そう言って、花は柊生を1番に気にかける。

「花は兄貴に気を使い過ぎて無いか?
アイツの過保護は今に始まった事じゃ無いし、悪阻で辛い時に周りにばっかり気を遣ってる場合じゃ無い。こんな時だから思いっきり甘えて、我儘になってもいいんだよ。
仕事だって大変だったら休めばいい。」

ズバッと康生に指摘されてそうかなぁと花は思う。

「柊君に気を遣ってる気は無いんだけど…。」

「でも、どっかで遠慮したり兄貴の考えに合わせようと思ってるだろ?
花は多分無意識に、他人の顔色を伺う所があるから分かって無いんだ。俺から兄貴にガツンと言ってやる。
とりあえず、今日は帰っても良いけど、明日から実家に来い。」

強制的なのは康君の方じゃ無い?っと花は思う。

実家でのんびり出来るかなぁ?
私は柊君と2人の方が悪阻も軽くなるしのんびり出来ると思うんだけど…。

半ば強引に決めてしまった康生を止める事が出来ず…。
この兄弟、妙なところで頑固だからなぁと他人事のように思い、苦笑いする。