柊生は花の気持ちが落ち着くまで、そっと側に寄り添う。
しばらくして花は涙を拭き、フーッと深く息を吐き顔を上げる。
心配そうな柊生に晴れやかな顔でこう言った。
「柊君、連れて来てくれてありがとう。
早く、家に帰ろう。」
「ああ、そうだな。」
柊生もホッとした顔をして、伝票とカバンを持って立ち上がる。
レジに行き、店のマスターに多めの金額を渡し、
「大変ご迷惑をおかけして申し訳けありませんでした。残りはここに居るお客様にコーヒーでも配って下さい。」
そう言って、2度と会わないであろう人々への配慮も忘れない。
花もマスターに頭を下げて、2人店を後にする。
その後店では、事の成り行きを密かに見守っていた常連客が、まるでドラマを見ているようだったと語り合い、未来に向かって進む2人の事を称え、コーヒーを酌み交わしたのだった。



