「いや、花はもしかして結婚式をしたく無いのかと思ったりもしていた。
俺の思いだけで進める訳にはいかないし…。
本当に大丈夫か?
何が引っ掛かる事があるんだったら遠慮しないで言って欲しい。」

柊君は勘が良い人だから感じとってくれていだんだ…。

「結婚式をやりたく無い訳じゃ無いんだけど…こんな幸せで良いのかな?って怖く感じちゃって…バチが当たらないかなって…。」

赤信号で車が停まり、柊君が振り返り私に目線を合わせてくる。

「俺としてはまだまだ幸せにし足りないと思ってる。
花は今まで人より沢山苦労して来たんだ。
誰よりも幸せになるべきだ。
バチなんて当たる訳ない。」

真剣な眼差しで柊君が言ってくる。

「結婚式……やりたい。
よろしくお願いします。」
頭をペコリと下げて意思表示する。

「分かった。花がやりたいようにやってくれたら良い。大女将にも口出しはさせない。
結婚式は花嫁が主役なんだからな。」

柊君がホッとした表情を見せてにこりと笑う。
もう怖気ついてはいけない。
私には柊君がいる。椋ちゃんもいる。
家族のみんなだってきっと結婚式を楽しみにしてくれている。

「花は、保育園の子を呼ぶ以外に何か要望はないのか?どんな結婚式をしたい?」
柊君が聞いてくるから、

うーん。と少し考えて思いを巡らす。

頭に浮かんだのは、この街に来て間もない頃うちの旅館の側にある神社で見た光景を思い出す。

あれは…神前式って言うのかな?

神社の境内を歩く白無垢姿の新婦さんと黒の羽織袴の新郎さんが、2人寄り添い歩く姿。

羨望の眼差しを向け、いつか私も着れる時がくるのだろうかと思いを馳せた。

「私、神社で神前式がいいな。
白無垢を来て境内を歩くのに憧れてた。」

「ああ、白無垢か色仕掛けか…花はどっちも似合うだろうな。
じゃあ、披露宴でウェディングドレスを着れば良い。」

柊君はきっと旅館で働いていた時に、沢山の結婚式に携わって来てるはずだから、全て柊君に任せれば大丈夫。

「椋ちゃんもいるし、そんなに贅沢なお式じゃ無くて良いよ。ありふれた普通の結婚式が良い。」

「一生に一度の事なんだから、遠慮しないでもっといろいろワガママ言ってくれれば良い。花の希望は何だって叶えてやりたい。」