若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜

2人残されて、花はまだ少し柊生に申し訳ない気持ちが残る。

「柊君、ごめんね…。
いつから気付いてたの?もしかして…集中出来なかった?」
花は、車椅子の上から柊生を仰ぎ見る。

柊生はしゃがんで花に目線を合わせ、首を横に振る。
「第一戦の時には気付いたよ。でも、逆に花が観てると思って集中出来た。来てくれてありがとう。
体調は大丈夫?」
柊生は花の顔を覗き込み、変装のための黒縁めがねを外されて、頬を大切そうにそっと触れ微笑む。

花はそこでやっと気付く。
そうだ…変装してた。急に恥ずかしくなって頬を染める。
わざとなのか柊生はそんな花の三つ編みを持って、
「おさげ髪可愛いな。」
と呟き、柊生は車椅子を押して自分の控え室へと向かい出す。