若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜

帰り際に、親父が俺を廊下に呼ぶ。

「何ですか?」
こっちにちょっとと誘導されるから大人しく着いて行くと、大きな紙袋を渡される。

「これ、もうそろそろ必要になるかもと思って買っておいたんだ。もう、いつ産まれてもおかしく無いだろう?」

袋を覗くと、何やら赤ちゃん用品がいろいろ入っている。

「これ、おくるみって言うんだ。知らないだろ?」
自慢げに父は話すが、俺だって伊達に育児書を何冊も読破している訳じゃ無い。

「そのくらいは知ってますけど、買ったんですか?」

「えっ⁉︎もしかして用意しちゃった?」

「いや、まだ買っては無いですけど…。」

「良かったぁ、花ちゃん入院になっちゃったし、まだ、赤ちゃん用品買い集めてないと思ってたから、被らなくて良かったよー。」

もしかして、人知れず1番産まれるのを楽しみにしいるのはこの人なのかと思うほど、いろいろな物を買っていた。

「靴下とか…こんないっぱい要りますか?まだ性別も分からないのに…。」

若干の困惑と嬉しさと、俺の楽しみを取るなと言う嫉妬やらが入り乱れ、塩対応になってしまうのは許して欲しい。

「いやいや、これから寒くなって来るから必要だよ。赤ちゃんなんて直ぐ片方落としたりするんだから。」

子育て経験者の貫禄を見せつけ、分からない事があったら何でも聞きなさいと先輩顔して父は帰って行った。

大きな紙袋を持って病室に戻ると、花もびっくりして中を覗く。

「これ…お義父さんが買ってくれたの?」

「みたいだな。あの人がもしかしたら1番
赤ちゃんの誕生を楽しみにしてるのかもな。」
俺は笑いながら言う。

「柊君は?」
花が俺の顔を覗き見るから、

「当たり前だろ。
俺だって我が子の誕生が楽しみに決まってる。
だけど、花の負担を考えると不安で心配で仕方が無いから、手放しで喜べ無いだけだ。」

ふふっと花が笑って、
「良かった。」
と言う。

「今までもしかして、喜んでるように見えなかったか?」

「そうじゃないけど、なんか…不安そうな感じだったから。」

「不安なのは花の体調だけだ。子供は楽しみに決まってる。」

そっかぁ、と言って花はベッドに戻って行く。

「これ以上柊君に心配させないように、大人くしてるね。」