若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜

柊生は永井に連れられるがまま走り出し、病院に急ぐ。

後部座席に座りながら、花のスマホに電話する。
取れるはずが無いと分かっていながら、留守電を残す。

「花、頑張れ…直ぐに行くから大丈夫だ。」
自分に言い聞かせるように何とか気持ちを保つ為に、何度も伝言を残す。

「社長、ご家族には僕から容態が分かってから連絡を入れて置きます。
明日のスケジュール変更と、あと…いろいろこちらで全部しますからご心配無く。」

「分かった。…頼む。」

20分ほどで病院に到着して、秘書と2人救急に走り込む。

「一橋花の夫です。花は、無事なんですか?」
受付にそう告げてバクバクと鳴る心臓をなんとか落ち着けようと周りを見渡す。

辺りは暗くなり、救急外来は気味が悪いぐらい静まり返っている。

「こちらにご記入を、3番の部屋の前でお待ち下さい。」

受付の冷静な態度に少しイラつきながら、柊生は署名し秘書と一緒に先を目指す。

廊下の角を曲がった所に、園長と遠藤先生が座っているのを見つけ慌てて駆け寄る。