「花?入るぞ。」
柊生はそっと寝室のドアを開けベッドに近付き跪く。
寝ている花の顔をそっと覗く。
今朝の花は朝食を作って一緒に食べたし、最近は夕飯も同じ物を、少しずつ食べれるようになっていたのに…
まさか吐くほど悪阻が辛かったなんて思いもいなかった…。
俺は何を見ていたんだろうと頭を抱える。
不甲斐無さと自己嫌悪と、いろいろな負の感情が湧き起こり、思わず寝ている花に『ごめん』と呟く。
幼少期を実の父から怯えて暮らす毎日を送っていた花を、俺が守り、慈しみ大事にしたいと思っていた。
花は辛い時でも辛いと言わない子だって事を、重々分かっていたはずなのに…
なぜ気付いてやれなかったのか…自己嫌悪に苛まれる。
しばらくそっと寝顔を見つめていると、上まぶたが震え花がそっと目を開ける。
「柊君…お帰りなさい。」
明らかに元気の無い声で、それでもフワッと笑いかけてくれるから、柊生は思わずそっと頬に優しく触れる。
「ただいま。体調はどうだ?まだ、気持ち悪いか?」
ううんと花は首を横に振る。
「いつから吐くようになった?」
花を責めるつもりはない。
ただ、気付けなかった自分への戒めの為に聞いてみる。
「一週間くらい前かな…
炊きたてのご飯の匂いとか、芳香剤とか…。
でもね。本当に柊君といる時は不思議と吐き気が治って、気持ちも安定してたから…わざわざ伝え無くてもって…心配させたくなかったし。」
柊生は花を気遣いながらそっと話し出す。
「悪阻って仕事とかで気を張ってる時は治るって聞いたけど…花にとって俺は…気を張らせてしまうほどだったか?」
「違うよ。違う!」
花は目を丸くして、ガバッとベッドから起き上がり、クラクラッと目眩を感じる。
柊生はそんな花を慌てて抱き留め、
「貧血気味なんだから、そんなに慌てて起きたらダメだ。」
心配顔で花を見守る。
「…あのね。柊君は私にとって、安心感しからないんだからね。悪阻が治るのはきっとホッとするからなんだと思う。」
柊生をなんとか安心させたくてそう言って慰める。
柊生は思う。
康生の前では悪阻が酷くなる…それは家族として気を許してるからであって、ありのままの自分を見せられると言う事だ。
花にとって俺は…無意識かもしれないがきっと…そうでは無いと言う事だ。
本来なら俺と一緒の時が1番、気が休める場で無くてはならないのに…。
花は無意識のうちに俺に気を使い、俺の顔色を伺い、俺を心配させたくなくて、悪阻で辛い事だって話しては貰えなかったんだ…。
夫婦なのに…夫婦だからこそ…。
父親が怖いと子供の頃に植え付けられた恐怖心が、無意識にそうさせてしまうのだろうか…
どうすれば俺は花から安心感を得る事が出来るのか…。
柊生はそっと寝室のドアを開けベッドに近付き跪く。
寝ている花の顔をそっと覗く。
今朝の花は朝食を作って一緒に食べたし、最近は夕飯も同じ物を、少しずつ食べれるようになっていたのに…
まさか吐くほど悪阻が辛かったなんて思いもいなかった…。
俺は何を見ていたんだろうと頭を抱える。
不甲斐無さと自己嫌悪と、いろいろな負の感情が湧き起こり、思わず寝ている花に『ごめん』と呟く。
幼少期を実の父から怯えて暮らす毎日を送っていた花を、俺が守り、慈しみ大事にしたいと思っていた。
花は辛い時でも辛いと言わない子だって事を、重々分かっていたはずなのに…
なぜ気付いてやれなかったのか…自己嫌悪に苛まれる。
しばらくそっと寝顔を見つめていると、上まぶたが震え花がそっと目を開ける。
「柊君…お帰りなさい。」
明らかに元気の無い声で、それでもフワッと笑いかけてくれるから、柊生は思わずそっと頬に優しく触れる。
「ただいま。体調はどうだ?まだ、気持ち悪いか?」
ううんと花は首を横に振る。
「いつから吐くようになった?」
花を責めるつもりはない。
ただ、気付けなかった自分への戒めの為に聞いてみる。
「一週間くらい前かな…
炊きたてのご飯の匂いとか、芳香剤とか…。
でもね。本当に柊君といる時は不思議と吐き気が治って、気持ちも安定してたから…わざわざ伝え無くてもって…心配させたくなかったし。」
柊生は花を気遣いながらそっと話し出す。
「悪阻って仕事とかで気を張ってる時は治るって聞いたけど…花にとって俺は…気を張らせてしまうほどだったか?」
「違うよ。違う!」
花は目を丸くして、ガバッとベッドから起き上がり、クラクラッと目眩を感じる。
柊生はそんな花を慌てて抱き留め、
「貧血気味なんだから、そんなに慌てて起きたらダメだ。」
心配顔で花を見守る。
「…あのね。柊君は私にとって、安心感しからないんだからね。悪阻が治るのはきっとホッとするからなんだと思う。」
柊生をなんとか安心させたくてそう言って慰める。
柊生は思う。
康生の前では悪阻が酷くなる…それは家族として気を許してるからであって、ありのままの自分を見せられると言う事だ。
花にとって俺は…無意識かもしれないがきっと…そうでは無いと言う事だ。
本来なら俺と一緒の時が1番、気が休める場で無くてはならないのに…。
花は無意識のうちに俺に気を使い、俺の顔色を伺い、俺を心配させたくなくて、悪阻で辛い事だって話しては貰えなかったんだ…。
夫婦なのに…夫婦だからこそ…。
父親が怖いと子供の頃に植え付けられた恐怖心が、無意識にそうさせてしまうのだろうか…
どうすれば俺は花から安心感を得る事が出来るのか…。



