春色ドロップス

 こうやってぼくらは遊んでいるわけです。 勉は何をしてるんだろう?
あいつのお父さんは確か溶接工だったはず。 gwも休みは無いって言ってたな。
おまけにお母さんは床屋をやってる。 だからその手伝いでもしてるのかも。
 さてさてぼくらは相変わらずヒートアップしてます。 ダイヤモンドの次は人生ゲームを出してきました。
「えーーーーー? 事故に遭っちゃった。」 「よしよし。 株で大儲けしたぞ。」
「あれあれ? 無人島に行っちゃった。」 「何だこりゃ?」
 「そういえばさあ、ハイアンドローって知ってる?」 「ああ、あの上か下かって騒いでたやつでしょう?」
「あれもいつの間にか騒がれなくなったわね。」 「何年前の話だよ?」
「さあ、、、。 私も生まれる前だから、、、。」 「そんな話を振られたって返事に困るわよ。」
「そうね。 ごめんごめん。」 とまあ相変わらず突拍子の無いことを切り出すミナッチなのであります。
 それにしても今日はよく遊んだなあ。 彩葉の家に3人も集まるなんて、、、。
5時を過ぎてミナッチとつかさは先に彩葉の家を出た。 「また遊ぼうね。」
ニコッと笑って玄関を出て行くミナッチの後姿を見ていたつかさは思わず声を掛けた。 「先生、スカートが捲れてる。」
「え?」 ミナッチはそれを聞いて中に戻ってきた。 「あらまあ、ほんとだわ。」
スカートを直すミナッチを見ながらつかさはクスクス笑っている。 「よし。 これでいいわ。」
「ねえねえ、これって誰の財布?」 そこへ彩葉が飛んできた。
 「あれあれ? それって私のだけど、、、。」 「先生のなの? 可愛い。」
彩葉が差し出した財布を見てつかさは爆笑した。 「エヘヘーーーーー、ミッキーじゃん。」
「つかさ 笑い過ぎ。」 「だってだって、あんまり可愛い揉ん。」
 「そうなの。 テーブルの下に置いてて忘れて帰るところだったわ。 じゃあまたね。」 転がるように走っていくミナッチを見ながらつかさはいつまでも笑っているのでした。(悪いやつ)

 家を出たぼくはまたまたいつものようにコンビニへ寄る。 「オー、健太じゃないか。 今日もデートしたのか?」
「するような人なんて居ないよ。」 「嘘吐け。 一人くらい居るだろう?」
「それが居ないんだよなあ。」 「さっき、つかさが嬉しそうにジュースを買っていったけど。」
「あいつはあいつ。 ぼくはぼくだから。」 「ふーん、何哲学者みたいなことを言ってんだよ? 彩葉ちゃんが居るだろう。 彩葉ちゃんが。」
「彩葉は友達だから。」 「そんな風には見えないけどなあ。 はい、お釣り。」
 コンビニを出たぼくはコーヒーを飲みながら歩いている。 「彩葉か、、、。 長く付き合ってきたんだよな。 でも恋人だとか何とかっていう思いは無いんだよ。 ずっと一緒に居れたらいいなとは思うけど。」
クラスじゃあ好きだの嫌いだのって言い合ってるやつも確かに居る。 でも誰が誰と付き合っていようと関係無いじゃないか。
石ころを蹴飛ばしてみる。 道沿いに立てられている看板に当たったらしい。
 そこへ父さんが運転する車が通りかかった。 「おーい、乗らねえか?」
「すぐそこだから。」 「あっそう。」
 窓を閉めた父さんはそのまま走り去ってしまった。 今日も仕事だったみたいだね。

 5月3日、今日は憲法記念日だって。 難しいことはよく分からないけど戦争だけは嫌だなあ。
教育と労働と納税は国民の義務。 それは分かってる。
でもさあ働きたくない人が居るのは何故? 納税したくない人が居るのは何故?
どっかおかしいよね 日本って。 学校は6,3,3,4制だしって言いながら短大とか専門学校を作ってる。
聞いた話では4年制大学の教育プログラムを2年で終わったから卒業しますってのを短期制って言うのであって短大を別に作るのはおかしいんだって話を聞いたことも有る。
 かと思えば専門学校の中には2年制 3年制 5年制なんてのが有るって言うよね。 うちの高校の工業課もそうだ。
いい加減に6,3,3,4制は取っ払ってもいいんじゃないかなあ? 教育自由化ってやつで。
 それにさあ教育委員会って何なの? 国会みたいで嫌だなあ。
有るからってまともなことをやってないじゃん。 虐めを隠蔽してみたりパワハラ校長を庇ってみたり。
 もっと言えば文部科学省って何なの? ただの嘘吐き化け物じゃない。
要らない物が多過ぎるなあ。 無駄な国だね まったく。
 そんな5月3日、昔のアイドルが武道館ライブで反戦アピールを打ち上げたってニュースが流れてた。 「勝手にやってくれよ。」って感じ。
 そもそもさあ昭和の時代にバカ受けしてた人なんでしょう? 今は昔、、、だよね。
 何を考えようと何を言い出そうと構わないけどさあ、ライブだけはごめんだよ。 押しにそんなことをやられたらドン引きじゃ済まないよ。

 家に帰ってきてスマホを覗いてみる。 小泉今日子 武道館ライブで激変?
夕食を食べていた父さんにそのことを聞いてみた。 「ねえねえ小泉今日子がさあ、武道館で戦争反対って打ち上げたんだって。」
「ふーん。 だから何?」 父さんの反応は思ったよりも冷ややかだった。
 「関心は無いの?」 「あいつだってそろそろ還暦だ。 人生終わったも同じだよ。」
「そんなもんなの?」 「昔はそりゃあ可愛いとかうるさいとかいろいろ思ったよ。 でも30過ぎてからあいつは変わっちまった。」
「どんなふうに?」 「何ていうのかなあ? マーボー豆腐がスナックの食べ残しになった、、、みたいな、、、。」
「変な譬えだなあ。」 「卵焼きはお前も食べるだろう? それが粘土だったらどうする?」
「粘土なんか誰も食べないって。」 「それくらいにあいつは変わっちまったんだ。 だから今は興味も関心も無いんだよ。」
「そんなもんなのかなあ?」 「お前だっておじさんになる頃には嫌というほど思い知らされるよ。」
そう言って父さんはビールを飲み干すのでした。 郁子はいつものようにアニメを見てます。
「これは面白い。」だの「あれは格好いい。」だの、、、。
 部屋に戻ってくるとスマホがうるさく鳴ってる。 何か有ったのかな?
取り上げてみると緊急地震速報だって。 と思っていたらガタガタユサユサ揺れ始めた。
「長いなあ。 けっこうな揺れだぞ。」 こんな夜に揺れなくてもいいだろうに。
 やっと収まったら電話が掛かってきた。 「灰原君?」
「ミナッチ、、、。 どうしたの?」 「怖くなかった?」
「ああ、さっきの地震ね?」 「そうそう。 私さあお風呂に入ってたから慌てて飛び出しちゃったのよ。 ハックション‼」
「ミナッチ、お風呂入ってきたら? 風邪ひいちゃうよ。」 「もうひいたかもよ。」
「それはいいから入ってきてよ。」 「うん分かった。」
 電話がまた掛かってきた。 「もしもし健太?」
「今度はつかさか。」 「今度はって何よ? 今度はって?」
「今、ミナッチからも掛かってきたんだよ。」 「人気者。 浮気者。 女好き。」
「そんなんじゃないよ。」 「知ってるけどさあ、地震大丈夫だった?」
「大丈夫大丈夫。 家も倒れてないし。」 「そっか。 彩葉が居るんだもんねえ。」
「それとこれとは別だって。」 「まあいいじゃない。 明日は何するの?」
「さあねえ。 予定は無いよ。」 「あらあら寂しいことねえ。」
 つかさは笑いながら電話を切った。 さっきの地震は震度4だって。
寝ようにも彩葉が気になって今日も寝れそうにないかも。 だからってこんな時に夜の散歩をするのも、、、。