うん、その字、絶対に買ってきました、とかではないわよね。
 と、新鮮な返り血のついたクーを見やって冷や汗を垂らす。竜種ってこんなに仕事が早いのかしら、と思いつつ、しっかり血抜き処理のされているそれをさくさくと捌いた。

 思い出すのは、昔クリスに作ってあげた兎のシチューだ。
 あの頃も、材料を工夫しながらだけど、シチューをよく作っていたっけ。

 しばらくことことと煮込んだそれは、気付けば具も少なく、まさにあのころと同じ、懐かしい兎肉とニンジンとジャガイモだけの(それも、節約のために具が非常に少ない)質素なシチューになってしまっていた。いけない、記憶に引きずられすぎた!

「クー、ごめんなさい、失敗しちゃ、」
「……、」

 はっと我に返ったエリナが、味見をしようとお玉を持つクーを呼び止める。
 ――が、一歩遅く、エリナにしては少々どころではなく質素なシチューは、クーの喉に吸い込まれた後だった。