エリナは、自分よりずっと背の高いクーの頭をわしゃわしゃと撫でてやった。
――と、そこではっとする。たしか、竜種の弱点は頭だ。そんな部分を無遠慮に撫でられて、不愉快どころの騒ぎではないのではなかろうか。
「エリナさん……?」
「……?怒ってない、の?」
「何を?」
不思議そうな顔をするクーに、おそるおそる尋ねる。質問の意図を察したのか、クーはへらりと笑って頭を差し出した。
「撫でられることなんて、もうずいぶんありませんでした。嬉しいです」
「そ、そう……?」
頭を垂れたクーは、続けて、と言う風に手を振った。
おっかなびっくりな手つきでエリナがそろそろと頭をなでると、クーは嬉しそうに満足げな息を吐いた。
ひとしきり撫でられて、クーが頭を上げる。その顔はふにゃ、と崩れていて、けれど美青年がそれをするものだから破壊力がものすごい。
エリナだって年頃の乙女だ。
少しどきりとした胸を押さえ、差し出されたままだったコップに、今日買ったばかりの新鮮なミルクを注いでいった。



