「クー、そろそろできるわ。シチューをよそうから、そこの棚にある、そう、そのお皿をとってくれる?ありがとう」
「このくらい、手伝いのうちにはいりませんよ」

 おそらく竜種貴族だというのに、クーはやけに腰が低い。
 たぶんそれが、エリナが緊張せずに話せている理由なのだろう。竜種貴族相手にこんな態度、平民の首がいくつ飛んでも足りないくらいなのに、なぜかエリナは砕けた口調で話してしまうし、手伝いだって頼んでしまう。

 クーの様子を見ても、クーは気分を害した様子はなく、むしろ生き生きと食卓の用意をしている。名前も知らない、会ったばかりの関係なのに、この空気はなんだろう。
 どこか懐かしいような気さえするこの雰囲気は、けして不快なものではなかった。