そう言って、エリナはクーとつけた青年を食卓へもう一度座らせた。
クリスとよく似た青年だから「クー」なんて自分でも単純だと思う。自分に少しだけ呆れながら、鍋をかき混ぜる手をちょっと大きく動かした。ちゃぽ、とシチューが跳ねる。
ところで、最初はおとなしく座っているクーだったが、しばらくするとうろうろとさまよったあげくにエリナの料理している鍋を覗き込んでくる。
そのたびに、エリナは子供にそうするように「危ないわよ」と席に連れ戻すのだが、クーは何度も何度も戻ってきてしまう。
そんなに料理をしている光景が珍しいのだろうか。
竜種の貴族は調理過程を見ることもない?……ありえるかもしれない。
彼らときたら、強者特有の高慢さで、尽くされて当然、と思っているふしがある生き物だから。
料理する過程も見たことがなく、だからエリナの行為が物珍しいのかもしれなかった。



