と、いうのが、今は平民であるエリナの前世、エリスティナ・ハーバルの末路だ。
 偶然にも前世と同じような赤毛に青い目で生まれたエリナは、名前まで前世とよく似ていた。

 違うのはエリナの顔にはそばかすがたくさん散っている、ということだろうか。
 日に当たってレストランの日雇い仕事をするエリナの肌は、貴族だったころとは違ってまともな手入れもしていない。

 けれども、エリナは今の自分が大好きだった。
 平民で、竜種とかかわりのないこともそうだし、平凡な容姿も好ましい。

 孤児であることには少しのさみしさ覚えたけれど、両親の顔も名前も知らないのは返って気楽でよいと思えた。

 幼い頃、転んで頭を打って思い出したエリナの前世は散々で、自分で自分がままならない立場だった。
 その証拠に、下町にはやっている娯楽小説には、エリナの前世である悪役王妃エリスティナがモデルの悪役がたいそうな頻度で登場する。