この話をする前に、まずは番の話をせねばなるまい。

 番、とは、竜種の伴侶のことだ。竜種には雄しか生まれず、したがって多種族を伴侶にする必要がある。
 その中でもっとも相性のいい――魂が呼び合うレベルだという――存在を、番、という。

 もちろん、番でなくても子供ができることはある。けれど、番以外と子をなしてもけして優秀な子は産まれず、竜種は番を裏切ったという苦痛に苦しむことになるのだという。

 番は人間に生まれる。番は、血筋ではなく魂で決まるらしい、らしいが、彼ら竜種は選民思想のようなものを持っているらしく、番の実家の身分をなるべく高くしたい、と言い出した。
 そうして生まれたのが人間貴族だ。