――そう、あの頃。

 10年前のことを思いだして、エリスティナはふう、とため息をついた。

 エリスティナをひととも思わず冷遇した挙句に追放した竜王と、エリスティナへの嫉妬でその竜王リーハをたきつけたカヤ。

 あの、エリスティナを冷たく見下す目は、今も時折エリスティナの夢に出てきてエリスティナを苦しめる。

 もう会えないだろう家族はどうなっただろうか。知るすべはかなわないけれど、あの竜王とその番のことだ。まともな支援などはなされていないだろう。

 せめて強く生きてほしいと願うことしかできない。

 エリスティナはしゃがんだせいで少し痛みを覚えた腰をさすって立ち上がった。
 やめよう、思い出すと気がめいってしまう。
 そう思った時だった。

「エリー!」
「クリス、どうしたの?やけに早い気がするけれど……」
「エリーが不安になってるのを感じたんだ。エリーが苦しんでいるのに、ほかのことをしようなんて思えないよ。でもエリーに頼まれた用事だから……急いで終わらせてきた!」
「まあ」