数年後。

「エリー!今日はうさぎを狩ってきたよ!」
「すごいわ、クリス。今日はシチューにしましょう」
「やったあ!エリーのシチュー、大好きなんだ」

 夕暮れ時、空が朱色に染まった森の家で、エリスティナはかわいい養い子の元気な声に、笑顔で返した。
 はちみつのような金色の髪が風にふうわりと揺れて、エリスティナの目を楽しませる。

 子ども特有のまろい頬は、エリスティナの嬉し気な反応に口角を持ち上げた。
 城を追われてから10年の時が経った。エリスティナがクリス、と呼んだのは、竜種の子供だ。

 エリスティナがこの森に居を構えて三か月ののち、卵から、それはそれは美しい竜種の雛が生まれた。
 エリスティナはその雛に、自分の名前とよく似た響きの「クリス」という名前を付けて育てた。