ふと、クリスはエリナの頬にそばかすがほとんどないのに気付いて、エリナを見つめた。

 それに気づいて、エリナは笑った。

「エリー、顔が……」
「エリスティナに近づいてる?」
「ええ、はい」
「ふふ」

 エリナは頬を押さえて、クリスに向き直る。

「もしかすると、記憶が混ざって、ちゃんと過去を受け入れられたから、エリスティナの顔に近づいているのかもね」

 クリスが少し驚いた顔をする。
 以前のエリナなら、過去にとらわれ、クリスを喪ったと自分を責めていたエリナなら、受け入れがたい変化だっただろう。
 けれど、今は。
 すがすがしい気持ちで、エリナはクリスとつないだ手を見つめた。

「――悪くないわ」

 ああ、本当に、生まれてきてよかった。
 産まれてくれてありがとう、生きていてくれてありがとう。
 そんな言葉から始まった恋の話は、こうして結末を迎えるけれど、ふたりのこれからはまだ終わらない。
 だって、あなたが私の幸いで、あなたが私の愛の証だから。
 竜種の王と、その番は、これから幸せな時を歩み続ける。

 ずっと――ずっと。永遠に。