「ほんとう?」
「エリー?」
「本当に、綺麗?」

 エリナは自分の口が動くのを止めることができなかった。
 好きな人に花嫁姿を綺麗だと思われたいのは、古今東西の女性の常だ。
 エリナが緊張の面持ちでクリスに尋ねる。

 あ、とか、うー、とか言っていたクリスは、エリナのまっすぐな視線を受けてようやっと決心がついたのか、ややあって、はっきりした声色で「はい」と口にした。

「綺麗だ……綺麗です。誰より、何より。あなたが。透き通るみたいで……この世界の、なによりも綺麗です」

 一瞬だけ敬語を外したクリスが、耳までを赤くして告げた言葉は、エリナの胸を熱くした。
 こんなにもときめくことがあるのだろうかという思いだった。
 見つめあって、ただ胸の鼓動を高鳴らせて――傍らのエルフリートが「熱い熱い」と言っているのを聞き流しながら――しばし。