「……最近、よく気絶するわね」

夜のとばりが降りるころ、エリナは目を覚ました。
おなかがぐうと鳴って、苦笑する。あんなことがあったのに、エリナの体は普通に空腹を訴える。生きているのだ。
ふと、エリナは自分のベッドの横で、ベッドに顔を伏して眠っているはちみつ色の髪をした青年に気づいた。

「クリス……」

クリスの寝息が聞こえる。安らかなそれは、かつてエリスティナが育てたクリスのものと同じだった。当たり前だ。同じひとなんだから。

「本当に、クリスなのね……」

たとえようもない思いで、エリナはクリスのはちみつ色の髪をかきあげた。
あの日喪ったと思っていた。あの時に、エリスティナの愛はすべて消え去ってしまったのだと……。

それが、きっかけがあるとはいえ、突然クリスとクーが同じだと理解したのだ。
戸惑いはある。けれど、それ以上に嬉しくて、クリスが生きていたことがただ嬉しくて、エリナは今、様々な想いを一瞬に押し込めて、微笑んだ。