「…………」

 わかっている。子どもを育てる余裕なんてない。
 毎日の食事にも事欠く有様のエリスティナが、竜種の赤子を、それも劣等個体を育てられるとは思わない。
 それに、まがいなりにもエリスティナは竜王リーハの妻なのだ。
 関係のない赤子を育てて、不貞を疑われたらそれこそ命が危うい

「…………、」

 わかっている。わかっている、のだけれど。
 エリスティナは、キャベツの上から卵を抱き上げた。そうっと、壊れないように。

 抱き上げた卵はあたたかく、その中に確かに存在する命を感じた。
 エリスティナは卵に口付ける。