そんなエリナに、何度だってあたたかな手を伸ばしてくれたクー。
 エリナはクーに、恋をしてしまった。

「エリスティナが先に、クリスを愛した。でも、そこにエリナが恋をつけ足したの。どちらも私だからわかるの。私は、クリス、あなたに、持てるすべての愛情を抱いている。……クリス、また泣いてるの?」

 見上げたクリスの顔は涙にぬれていた。
 エリナはふふ、と笑ってクリスの涙を指先でぬぐう。

「いつまでも、泣き虫ね、クリスは」
「そんな、そんなこと、ずるいです。エリー。僕は、ずっとあなたを好きで、あなたに愛情も恋もすべてささげてきて、この先はないと思っていたのに」

 クリスが、エリナの顔中に雨のように口づけを降らせる。エリナは微笑みでそれを受けとめた。

「これ以上好きにさせるなんてずるいです」

 クリスは、横抱きにしたまま、エリナの体をぎゅうと抱きしめた。
 痛いくらいの抱擁は、今は心地いい。離さないで、もっともっと近くに行きたい。
 そう思うから、エリナは目を閉じて、クリスの抱擁を受け入れた。