「クー、クリス……」
「はい、エリー」
「あなたは、ずっと知っていたの?」

 私が、エリスティナだって。
 言外にそういう言葉を連ねて、エリナはクリスを見上げた。
 クリスはふっと表情を陰らせて「はい」と小さく答えた。
 まるで、黙っていたことが悪であるかのように。

「知っていました。あなたがエリーだと……僕を育ててくれたエリスティナ・ハーバルの生まれ変わりだと知っていました。そして、その中にエリーの記憶をもって生まれていたことも。なんとなくは、察していました」
「私に黙っていたことを悔いているの?」
「いいえ」

 クリスははっきりと言った。
 決めたのは僕です。エリーが番だからと言って、過去の……エリー、エリスティナと同一視してはいけないと思ったから、言いませんでした。そうしてしまえば、生まれ変わる番みんなが同じだと思いかねなかったから」