背の高い薔薇の生垣に見下ろされている。不安に目を揺らしたエリナを抱き留めるようにして両の腕で包んでくれたのは、誰より、何より慕わしいひとで――大好きな――守りたかった――愛してもいい、大切なひとで。

「ああ……」

 エリナはその空色の目に涙をためた。たたえた涙がすぐにこぼれる。あとからあふれてやまない。
 はちみつ色の髪が風にそよいでいる。
 どうして、どうして気付かなかったのだろう。
 答えはずっと、ここにあった。会いたかったあの子は、ずっとここにいてくれたのに。

「エリー、どうしたんですか」
「……ス」
「え……?」

 最初にこぼした声は、ささやきのようになってしまった。
 震えた声が、もう一度を繰り返す。

「クリス……」