ぐるぐる回る視界に、目を閉じる。
 竜王陛下の大切なひと――育ての親――離宮に住んでいた。

 もう少し、もう少しで何かがつながりそうなのに、からん、からんと響く鐘の音に邪魔されて、浮かんだそばからかき消されてしまう。
 思い出して――思い出したい。思い出さないといけない。

 エリナは目をぎゅっと閉じる瞼に力を入れる。
 ダーナが「エリナさま?」と心配げな声をあげる。それに大丈夫よ、と手をあげて、そして。

 ふっと懐かしい気配がした。
 はたと目を開けたエリナは、呼ばれている気がして振り返る。
 懐かしい?違う、これは懐かしい、とか、そんなものじゃなくて、もっと近しい、そう、自分自身を、鏡で見たときのような感覚。