「クー、こうしてていいの?」
「え?」
「そろそろお仕事しないといけないんじゃない?」

 エリナはそう言って、今もエリナを抱きしめたままのクーに尋ねた。
 いくらエリナに危機が迫っていたって、クーが王としての執務をいっさいしなければ国が回らない。エリナだってそのくらいはわかっている。

「それは、まあ、そうですけど」

 クーがあはは、と笑ってごまかそうとするのを、エリナは腰に手を当てて咎める。

「そうやって、仕事を人任せにしてはいけません!」

 めいいっぱいの怖い顔を作ってクーを睨むが、クーはと言えばその顔さえも噛み締めているようで、まったくこたえた様子がない。
 エリナはもう!と声をあげた。

「私は大丈夫よ。クーがくれたペンダントがあるし……それに、執務室はあんなに高いところにあるんだもの。私の散歩コースくらい見えるでしょ?」
「うう……」
「大丈夫、大丈夫。離宮に花が咲いてるって聞いたの。少し歩きたいからそこまで足を延ばすだけよ。何かあったら呼ぶから、クー、お仕事、がんばって?」
「……わかり、ました」