エリナは、クーを好きだと、好もしいと。そう思っている、この心を認めざるを得なかった。

「私が、危ないの」
「はい」
「本当に?」
「ええ」
「そう……」

 短い問答を繰り返す。
 エリナはクーの緑の瞳を見定めるように見つめた。
 その目は奥まで透明で、ああ、本当に私は今危険な状況なんだなあ、なんて人ごとみたいに思ったりして。

 それを人ごとだと思えたのは、きっとエリナがクーを信頼しているからで。
 エリナは口の端をわずかに引き上げ、目を細めた。

「しょうがないなあ。守られてあげる」
「……エリー」
「守ってくれるなら、守ってもらわなきゃ。そのほうがお得だもの、ね」

 エリナが茶化すように言うと、クーもつられてふ、と笑った。
 しばらく二人で見つめあって、笑いあって、そうしてふと窓を見やった時、空には星が散っていた。

「星が、落ちてくるみたい」
「エリーのためなら、僕、星だって月だって、取ってきますよ」
「……遠慮しておくわ」

 クーなら本当にやりかねなくて、エリナは乾いた笑いで断った。
 夜が更けていく。久しぶりに、平和な夜だった。