「あなたが嘘だというなら、あなたにとって、この想いは嘘になってしまうでしょう。それでも、僕にとって、あなたを――エリー、あなたに恋をした、この心は真実、僕の心なんです。竜種でも、竜王でもなく、ただのクーとして、あなたを愛した、この気持ちは、あなたにだって否定できない」

 クーの視線はまっすぐだった。
 それでいて、あまりに真摯で、純粋だった。
 それが、エリナを慰めようとして、エリナを懐柔しようとして言う言葉ならよかった。
 それならエリナは心置きなくクーを振ることができただろう。
 あなたなんて嫌い、そんな言葉を貫き通せた。

 けれど、これではいけない。これはだめだった。
 クーの想いはひたむきで、ひたすらにエリナへ尽くす心があった。
 それがわかってしまうから――緑の、アーモンド形の目が、クリスと同じに見えてしまって。

「ばかね……」

 ――エリナは、認めざるを得なかった。
 エリナはクーを置いて行くことはできない。と。
 もうほだされている。まだ恋ではない。でももう引き返せない。
 こんな風に、心ごとくるむように愛されてしまえば、もはや失墜するしかできなくなる。