そう――そう、エリナは、エリスティナのまま――。
「恋知らず」でいたかった。

 だからきっと、ここにいたらだめなのだ。
 このままここに居れば、エリナはきっと、遠くないうちにクーに恋をしてしまう。
 胸が激しく鼓動する。クーに近づくたび、触れたいと思ってしまう。
 だから、だめなのだ。
 逃げなければ、と思った。どこへなんて決めていない。

 ――クリス、今、とてもあなたに会いたい。

 もうどこにもいない、愛しいだけの雛を思い出す。
 あなたが好き、と全身で訴えてくれた、その子供はエリスティナのせいで死んだ。

 クリスは死んだ。リーハは死んだ。カヤも死んだ。もうエリナには悪意の矛先も頼るよすがもなにもない。