竜王リーハに番が現れた。
 その吉報――竜種にとっては、だが――は、またたくまに国中を駆け巡った。

 見つかった番は平民の少女で、エリスティナとは十ほど年の差があった。
 濡れたような黒髪をした碧眼の少女は、名前をカヤと言った。大昔にブルーム王国へ移民してきた東の民族の血が混ざっているのだろうということだった。

 竜王リーハとカヤは、互いに一目で恋に落ちたらしかった。
 平民も竜種より下に見られているというのに、どういうわけだろう。

 エリスティナはそう思ったが、どうやら平民であるカヤと人間貴族であるエリスティナでは、竜種という存在の認識に天と地ほどの開きがあるようだった。

 そもそも、平民は竜種と会うことがない。

 それも当然だろう。竜種と人間種はまず支配階級と被支配階級。とくにプライドの高い竜種ほど人間に姿を見せたがらないため、平民である人間が竜種と会うときは、比較的人間種に友好的な竜種に会うことが多い。