「ふふ、驚いたかい?そうだろう、そうだろう、なにせ精霊竜は私一人!とっても珍しいのに、今の竜王様にはこき使われているんだ!もうここ90年くらい、休みをとっていないよ」

 急に遠い目をしたエルフリートにエリナは苦笑いするしかできない。
 けれどエルフリートは話すだけ話して満足したのか「なんにせよ、食事を用意させておくれ」と言ってぱちん、と指を鳴らした。

 その音とともに、開け放したままだった扉から十数人ものメイドたちが入ってくる。
 めいめいに湯気の立つ料理を持ち、部屋の中央に置かれたシンプルかつ大きなテーブルに配膳していった。

「陛下、予算はきちんと用意してあるから、早急に部屋を整えたほうがいいって言っただろう?こういうときのためだったんだよ」
「ぐ……」
「番を探すのはいいけど、番を守るためのきちんとした場所を用意しないと、番にとっては過ごしにくいこと限りなし。番を見つけたくせに、一生独り身でいるつもりだ、なんて言ってたけど、結局は使うことになったじゃないか」
「一生、独り身……?」