「ここは自由に変えてもらっても構いません。もちろん、中庭も。中庭には僕の好きな花が植えてありますが、すべての女性の好むものではないことは承知していますので」
「あら、私は好きよ、タンポポ。この部屋は殺風景だから、変えていいなら少しだけ整えさせてほしいくらいね。余っている家具なんかは、どこかにおいてあるかしら」

 かつての貴族らしい――貧しくはあったが――感覚を思い出して、エリナはわくわくと胸を弾ませた。
 部屋を整えるのは好きだ。あるものや余っている調度をもらってきて自分好みの内装にすることはエリナの前世からの趣味のひとつでもある。

 しかし、エリナの言葉にクーは気まずげに目をそらした。

「クー?」
「ありません」
「ありませんって……ひとつも?」
「はい」

 クーは彼にしては珍しく、口ごもりながら続けた。