エリスティナをかばう演技力は、さすが竜種といえど王である。
 そのあとに「どうして我が人間貴族などをかばわねばならぬ」とエリスティナに当たり散らさなければ完璧だった。

 どうしてエリスティナの尊厳は度外視されるのだろう。
 ……もともと、人間にそんなものはないということだろうか。

 竜種の番でない人間には価値がない、を貫くこの国が亡べばいいのに、と思うが、それを言えば殺されるのはエリスティナであるし、最強種の集うこの国が亡ぶ、というのはめったなことではありえないだろう。

 竜種は良くも悪くも強いものに従う性質だ。
 クーデターすら起きようもない。それだけ、竜種というのは動物的で、だからこそ結束力が強く、多種族の及ばぬ力を持っているのだった。