エリナはきっと無意識にクリスの頭を撫でた。
 クリスは、エリナに恋をしている。エリスティナを愛している。エリナの中には、エリスティナがいる。そういう、精神的なものに対する思いを、たしかな確信とともに、クリスは抱いた。
 ここにいるのは、エリナだけれど、間違いなく、エリスティナなのだ。
 クリスが愛した、エリスティナ――エリーなのだ。

「エリナ」
「うん?」
「また、食べにきていいですか?」
「クー、あなた以外と図々しいわね」
「だめですか?」

 子どもみたいな顔をして、エリナにすがる。
 エリナが好きだ。逃がしてやらないと、と思っていた。

 けれど、その隣に、少しでも自分がいられるなら、と思って、次を望んでしまう。
 エリナに恋をすることに、もう迷いはなかった。

「いいわ。その時はまたシチューを作ってあげる」
「本当ですか!?」
「ふふふ!何よ、その顔。断わられると思ってた?」
「それは、その、まあ、はい」
「まあ確かに常識知らずではあったけど」
「ええ……」