エリナが鍋からよそったシチューが卓上に並べられる。手伝いたいと思ったけれど、カトラリーの場所を知らないクリスに手伝えることはそう多くはなかった。
 サラダとパンがそっと添えられる。

 クリスの視線は目の前のシチューにくぎ付けになっていて、だからエリナが座るための椅子に自分が座っていることに、考えが一瞬及ばなかった。
 エリナが木箱の上に座っているのを見て、クリスは立ち上がる。

「僕がそちらに」
「クーじゃ箱が壊れちゃうわ。重そうだもの。それにあなた、一応お客様ですもからね」
「ですが……」
「ほら、冷めちゃうから。席について」
「……はい」

 確かに、体格のいいクリスが座ってしまえばその箱は壊れてしまうだろう。第一、往々にして竜種は重い生き物だ。
 しぶしぶ頷けば、エリナは満足げに微笑む。