小さくこぼした名前は、エリスティナの愛称だ。
 かつて何度も口にした名前を、久方ぶりに読んだ気がする。
 その響きは、かつてと同じやわらかな甘さをもって、クリスの胸を締め付ける。

 探すべきではないのかもしれない――嫌だ、そばにいないと守れない。
 エリスティナの生まれ変わりは、エリスティナではない――違う、そんなつもりで探しているんじゃない。

 エリスティナの生まれ変わりを、エリーの代わりにするのか。それは、エリスティナが最も傷つけられた行為だ――リーハと同じことを、するつもりなのか。
 何から守ると言うんだ。もう、リーハも、カヤもいないのに――何からも守りたい。
 ……だって、もう二度と失えない。

 エリスティナの血の温度を忘れたことなどありはしない。
 だから、だからこそ――クリスは、自分がエリスティナの生まれかわりを愛してしまったとして――それが、番愛しさゆえのものだったならば、どうすればいいのだと奥歯を噛んだ。