クリスは、二人を幽閉している城の塔へと歩を進めた。
 ……あれから70年の時が経った。
 エリスティナのむくろは土へ還り、人々はエリスティナのことを面白おかしく物語へと変えた。
 悪役王妃、なんて、そんな言葉にして。

 それが、エリスティナが森で暮らしていた間のカヤの手によるものだと、クリスは気付かなかった。それもそのはずで、あの後、クリスは死に体のリーハを引きずって王宮へ向かい、そのままカヤとともにリーハを幽閉した後からずっと、エリスティナの躯を埋めた、エリスティナのかつての住まいだと言う離宮に引きこもっていたのだ。

 最初の10年は何も食べなかった。瞬きすらしなかった。
 20年たって、エリスティナを失ったにもかかわらず、自分が死なないことに気づいた。
 30年、40年がたち、それがまだ未発達だった、番を認識する器官のせいだと知った。