結論から言って、件の襲撃は、竜王リーハの番であるカヤが望んだことだった。
 リーハとエリスティナの間の肉体関係を疑ってか、リーハにエリスティナとクリスを殺すように願ったのだと言う。
 エリスティナとクリス――卵だった雛竜が死なねば自分が死ぬとまで言ったらしいカヤの願いを聞き届けたリーハ。

 そのまま死んでおけばよかったのに、そう本気で思ったクリスを、エリスティナはいさめるだろうか。
 ……わからない。エリスティナは、クリスの前で誰かへの怨嗟の言葉を吐いたことなどなかったから。
 やさしいひとだった。世界の悪意を知っていてなお、縁もゆかりもないものに手を差し伸べられるひとだった。

 クリスは、リーハとカヤを許せなかった。
 命で贖うことすらさせたくないほどに、許しがたかった。
 カヤが番を想ってエリスティナの死を願ったのなら、そのエリスティナを番とするクリスがカヤとリーハの永遠の苦しみを望んで何が悪いのだろう。

 ――きっと、エリーはこんなこと望まない。

 わかっている。クリスの行為は、エリスティナが生きていれば、痛ましげに目を閉じるようなことであると理解している。