エリスティナを殺された怒り、エリスティナを守れなかった自分への怒り。
 そうして、もう少し早く、竜王へと覚醒していれば、エリスティナを救えたのにという嘆き――……。

「ぎぃ、ああああああ!」

 森に黒炎が燃え移る。苦しみにのたうち回るリーハを冷徹なまなざしで睥睨して、クリスは燃えてゆく森を見つめた。

 爆炎にも似た炎が、クリスとエリスティナの暮らした森を焦土へと変えてゆく。
 炎を消すこともできた。しなかったのは、それをどうでもいいことだと思ったからだ。
 エリスティナを抱いたまま、クリスは泣いて赤くなった目をこすった。

 ――あなたがいないから、世界に何も感じられない。
 ふいに、こつん、とクリスの靴に何かが触れた。
 黒くすすけたそれは、よくよく見れば、エリスティナが最後に作ってくれたシチューのニンジンだった。