王宮に入ると、すぐに謁見の間に通される。
 エリスティナは緊張しながらも、美しい所作でもって、竜王に礼をとった。

「お目にかかれて光栄です。竜王陛下。ハーバル伯爵家が娘、エリスティナが参上いたしました」
「人間貴族か、ふん、なるほど、代替品としてはまあまあのものを選んできたな、大臣」
「は、ありがたきお言葉です」

 エリスティナの言葉を丸々無視して大臣と話し始める竜王。たしか名前はリーハとかいうはずだ。
 でも、その名前を呼んではいけないことはこの国では子供だってわかる。

 竜種の名前を呼んでいいのはその番、あるいは同じ竜種だけなのだ。
 人間貴族如きが呼んで良い名前はありはしない。

 優雅なカーテシーをして、頭を下げて腰を折ったまま、エリスティナは待ち続けた。