次に目を目を覚ますと、黒髪の、目元のやさしい女性が沸かした湯をバスタブに流しいれているのが見えた。
 眠ったおかげで頭はすっきりとしている。
 シーツに手をついて起き上がると、黒髪の女性が起きたエリナに気づいてぱあっと笑顔になった。

「目を覚まされたのですね」

 少し目じりにしわの寄ったふくよか女性は、その豊満な体でエリナを抱きしめる。
 前世、今世とも――今世に関してはエリナは母の顔も知らない――母と似たところの何もない女性だが、その抱擁には母親の懐かしさを感じた。

「ぷは、ええと、はい。あなたは?」
「ああ、申し遅れました。私はダーナと申します。ダーナ・ウィロウ。竜王陛下にやとわれた、番さまの侍女ですわ」
「侍女」
「身の回りの世話をする女性のことです」