雇った御者はこちらの事情を把握しているようで、何度もエリスティナを憐れむような目で見て「かわいそうになあ」と呟いていた。

「それでも、選んだのは私だわ……」

 そう思うよりほかなかった。さもないと、この世の全てを呪ってしまいそうだと思ったから。
 馬車の乗り心地は、お世辞にも良いとはいえない。

 それでもきっと、この先の生活よりずっとマシだろう。
 馬車に揺られて一昼夜、堅牢で煌びやかな王宮が見えてきた。

 見上げた王宮はまあ、なんというか、浮世離れしているほど美しくて。
 竜種の住まう世界は、人間種の世界と全く違うんだなあ、なんて思ったりしたのだった。