「何よ。何よ、あなたなんか、私の大事な子でも何でもないのに」
「うん、ごめんなさい、エリー」
「どうしてやさしくするの、どうしてあの子と同じことを言うの」
「どうしてでしょう。でも、あなたにこう言いたいと思ったんです」
「どうせ私なんて代替品なのよ。ほんとの番が現れたら、どっかに捨てられちゃうんだわ」
腕の力が強くなる。ク―の声が低くなった。
「エリーは代替品なんかじゃない」
「番だからでしょ、番っていう縛りがなければ、私なんてなんの価値も」
「エリー!」
クーの、どこか焦燥感を感じるような声。と、同時に、唇に触れるやわらかな感触。
「ん、ふ……」
驚いて鼻から息を吐きだす。でも、そのあとうまく吸えない。
エリナは目をぱちぱちと瞬いて、次いでぎゅっと目をつむった。



