竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~

 もう頭がぐちゃぐちゃだ。
 上手く考えられなくて。支離滅裂な思考回路しか動かせない。

「もうし、もうしわけ……ううう……」

 竜王に謝らないと、という焦りと、クリスに会いたい、という想い。
 そして、竜種への根本的な恐怖の念が、エリナを苦しめてやまない。
 エリナは頭を両手で押さえてうずくまった。

 その時だった。
 ふわり、と、あたたかくてたくましいものが、エリナの細い体を抱きしめる。
 やさしく抱かれた体には、目の前のぬくもりから伝わってくる鼓動が響いて。
 とくん、とくん、とくん、とくん。
 そうやって、胸の音を体伝いに響かせて、エリナをやさしく抱いた腕が、エリナのぱさついた赤毛を撫でて、そうやって、目の前の男は、エリナを安心させるように声をつづけた。

「大丈夫、大丈夫です、エリー」

 ――大丈夫だよ、エリー。僕守ってあげるからね。

 いつか、エリナがクリスに告げた言葉がリフレインする。
 目からぶわ、と涙があふれて、エリナはクーの腕の中でわんわんと声を上げて泣いた。