「ひ――」
「エリー、息をして」

 後ずさるエリナに近づくクー。
 近づくはちみつ色が、エリナの空色の目にいっぱいに映りこんで、そして。

 ふわり、と。
 そうとしか思えない柔らかさで、クーの形よい唇が、やさしくエリナのそれに重なった。

「……!?」

 とっさに、はじかれたように暴れるエリナの背をかきだいて、クーが口づけを深くする。
 無理矢理にふさがれた空気の通り道に、もっと息が苦しくなる。
 どんどんと力一杯にクーの固く鍛えられた胸を叩いても、クーの体はびくともしない。

 これが初めてのキスだなんて気づかなかった。
 それくらいに苦しくて、それくらいに恐ろしかった。誰が――今目の前にいる、クーが。