竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~


 いいや、本当は予想できている。そうと思いたくない、信じたくないだけだ。
 エリナは今の竜王を知らない。関わりたくないと思って生きてきたからだ。

 それでもわかる。馬車のほとんどを埋めるはちみつ色は、おそらく竜王の色。
 見せつけるように使われた色は、竜王にとっていっとう大切なものを送迎するための乗り物なのだと言葉より雄弁に語っている。

「番が、見つかったの……?」

 エリナは恐れるようにつぶやいた。
 手が震える。足が震える。指先が冷えて、立っていられなくなる。
 祈るようにしゃがみこみ、エリナはカーテンを引いて目を閉じた。

 住民たちの、物珍しそうなざわめきが耳に届くのさえ恐ろしい。